前原pを慕う若手プロや多くの北関東支部員も駆けつけ、応援団の人数では
前原pと吉田pが二分していたであろう。
そんな中、自分は特に熱心に誰を応援するという訳でもなかったが、観戦者
の一人として、麻雀ファンの一人としてただ良い対局を観たいという一心で
たった一つの卓を見つめていた。
■6回戦(板川p×大橋p×前原p×荒p)抜け番:吉田p
・東4局1本場 親:大橋p
板川p、12巡目に四暗刻聴牌し、立直。周囲に緊迫感が漂うも流局。
1114477788(555)
・南1局2本場 親:荒p
今度は前原pが国士無双一向聴。しかしここは荒pがドラ含み七対子で
満貫ツモ和了り。
・南1局3本場 親:荒p ドラ4
大橋pがAルールならではの手役にこだわった立直を見せる。
三四五九九(34567)356 (8)ツモ打6
親の荒pも追っかけ立直するが流局。
・南1局4本場 親:荒p ドラ北
南場は完全に荒pのペース。決まれば決定的な和了りとなる以下の聴牌。
345(678)白白白發 中(加カン)
しかしここは前原pが板川pから出和了りようやく荒pの親を蹴る。
・南4局 親:大橋p
荒p、前原pから2600を直撃し3人を沈めるAトップ。
6回戦 板川p:▲20.2 大橋p:▲8.9 前原p:▲2.8 荒p:31.9
■7回戦(吉田p×大橋p×前原p×荒p)抜け番:板川p
・東1局 親:前原p ドラ五
親の前原pがいきなり6000ALLの先制パンチを浴びせる。
三三五五五99北北北 西(ポン) ツモ三
・東2局 親:大橋p ドラ(2)
荒pに仕掛けが入ってるところ吉田pに以下の手が入る。
七七七88(444555)白白
和了れずと見てか自信がないような立直であったが案の定、八索は2枚
前原pに、白は前原pと荒pの手の内にそれぞれ1枚あり待ちは純カラ。
・東4局 親:荒p ドラ7
勢いに乗る前原pの手牌は以下。
(12345789)中中 南(暗カン)
そこに吉田pが慎重に聴牌し、ドラの七索を引きいれ意を決して六筒切り
立直。これが前原pの満貫に放銃。
七八九23489(666679)7ツモ打(6)
・南4局 親:荒p ドラ三
吉田p、以下の手牌から六索を重ねて四索切りで9巡目立直。
一二三12222346(23) 6ツモ打4
一二三12222366(23)
大橋pも次巡10巡目に追っかけ、更に親の荒pもドラ嵌三萬待ち立直で
追っかけ荒pが吉田pから3900出和了り。
前原pに死角なし、全く危なげなくトップでリードを広げる。
7回戦 吉田p:▲30.6 大橋p:11.1 前原p:27.4 荒p:▲7.9
■8回戦(吉田p×板川p×前原p×荒p)抜け番:大橋p
7回戦の勢いそのままに東1局、前原pの2000・3900で開局。
その後も前原pは決して手は悪くはなかったが前原包囲網が発動したのか
吉田pツモ、荒pへの満貫直撃で板川pとのラス争いで迎えたオーラス親。
・南4局1本場 親:前原p ドラ(9)
七七八八九九23(55789) 1ロン 前原p→板川p 7700(8000)
この放銃で板川pが僅かに浮き、前原pは今回の十段戦初めてのラス。
8回戦 吉田p:22.1 板川p:2.9 前原p:▲30.3 荒p:5.3
■9回戦(吉田p×板川p×大橋p×荒p)抜け番:前原p
抜け番は1日目の成績順に2日目の何回戦にするか選択権がもらえるが、
トップ通過した前原pが選んだのは12回戦中丁度、中間のこの9回戦。
次の10回戦終了時点で5着は足切りとなり11回戦には進めない。
10回戦で抜け番となる事が決まっていてここまで4着の荒pにとって
は本当の正念場であろうが、前原pのいない間にポイントを伸ばそうと
思うのは他のメンツに取っても同じこと。
東1局、吉田pが幸先よく大橋pより7700を討ち取るが、東2局で
今度は板川pへの手痛い12000放銃と東場は荒れ模様の展開。
しかし南場に突入すると一転して稀に見る膠着状態となる。
・南1局 親:大橋p ドラ(3)
口火を切ったのは親の大橋p、高目の六索をツモり4000ALL。
六七八12345789(77) 6ツモ
・南1局1本場 親:大橋p ドラ白
続く1本場でも大橋p以下の聴牌。ドラが場に見えておらず他家の警戒
も厳しく不発に終わる。
一一六六889(22)白白發發
・南1局5本場 親:大橋p ドラ(3)
大橋pの粘りにより5本場まで流局が続く。またも先手を取って立直を
放った大橋pに追っかけ勝負に挑んだのが荒p。お互いにツモる気配も
なくまたも流局かと思われた海底で荒pの掴んだのはなんとラス牌の白。
五五六七八456(567)白白 白ロン 荒p→大橋p 7700(9200)
6本場も大橋p一人聴牌。7本場で板川pの一人聴牌でようやく大橋p
の長かった親が流れるが積み棒は既に8本。
親の荒pも1300(2100)ALLツモと聴牌流局でついに初めて
みる10本場に突入。あまりの長さに選手も疲労したのかここで一旦、
中断して休憩タイム。
南1局10本場、ここまで来たらもはや手役にこだわるよりもスピード
重視で供託棒を狙いに行く方が有利と見てか荒pは軽い断幺仕掛け、
足枷となるドラ白が早目に場に放出され、それをポンして和了りに向かう
板川p。しかし和了ったのは動かず型を貫いた吉田p。
イーペーコーツモで本当に長かった10本場を終える。
・南4局 親:吉田p
9回戦ここまでラスの荒p、無念の足切りとなってしまった王位戦決勝
に続き十段戦でも足切り敗退となってしまうのか?3着目吉田pとの差
は3000点で逆転可能な範囲。ここでは荒pの心境になって場を見つめ
ていたが、そんな荒pの心境を察していたかどうかは分からぬが大橋p
より願ってもみない立直棒が放たれる。
この絶好の立直棒を見た荒p、断幺、ドラ1の2000点で見事にラス
抜け。吉田pにラスを押し付け、足切り回避に微かに希望を繋ぐ。
9回戦 吉田p:▲18.9 板川p:13.8 大橋p:19.2 荒p:▲14.1
■10回戦(吉田p×板川p×大橋p×前原p)抜け番:荒p
荒pは前局既に▲17.5で終了しており、足切りは吉田pと板川pの間での
争いになると思われた。9回戦で思わぬラスをひかされた吉田pは▲48.7
でトップ必須。尚且つBトップなら53200以上なければならないという
厳しい条件。駆けつけた多くの北関東の仲間が見守る中、信じられない
ような光景を目にする事となる。
・南1局 親:前原p
事件はここから始まった。吉田p、高目大三元の聴牌。ここに飛び込ん
でしまったのが大橋p。この倍満放銃で大橋pはすっかり集中力が切れて
しまったように見えた。
22888發發 中(ポン)白(ポン)2ロン 大橋p→吉田p 16000
続く南2局でも大橋pは親の吉田pに断幺、対々和の5800の放銃。
この非常事態で大橋pは何を考えるべきであったのか?
大橋pは9回戦終了時に20.8ポイントの貯金があり、荒pとのポイント
差を考慮すると極端な話0点の2人沈みラスでも11回戦には進む事が
出来たのだ。
南3局、手負いの大橋pに親番が回るも、板川pが2000・3900
ツモ。いよいよ大橋pの持ち点が2000点を切ってしまい完全に冷静
さを失ってしまったのかオーラス更なる悲劇が訪れる。
・南4局 親:板川p
吉田pはここまで条件クリアの55100トップ。前に出る必要はない。
8回戦痛恨のラスでここまで控え目であった前原pがついに動き立直。
そして大橋pも立直し、ギャラリーが少々ざわめく。
数巡後、待ち構えていた板川pに大橋pが親満12000の放銃。
南4局1本場、板川pにメンタンピンの手が入るも前原pの5200は
5500への放銃となり終了。終わってみればまさかの大橋p一人沈み
で2着から5着転落で足切り敗退。1局の怖さを思い知った回であった。
10回戦 吉田p:33.1 板川p:14.1 大橋p:▲53.1 前原p:5.9
■11回戦(吉田p×板川p×前原p×荒p)
2日間半荘12回戦に亘る戦いも残す所、あと2回戦。
一人飛びぬけている前原pを除き2位争いは熾烈。前原pがトップならば
ほぼ優勝は確実、以外の者であればこの11回戦を制した者が最終12回
戦で前原pへの挑戦権が得られるであろう。
・東4局 親:前原p ドラ一
板川pがドラ一萬と九筒のシャボ待ち立直。そこに荒pが5200放銃。
・南2局 親:吉田p ドラ北
ドラが字牌の場合は配牌時にその所在をすぐに確認するようにしているが、
好調板川pの手に暗刻。自信を持って8巡目に立直をかけるも不発。
三四五六七八(45999)北北北
・南2局1本場 親:吉田p ドラ4
今度は荒pが3巡目に立直。
六七八12377(34) 9(暗カン)
慎重に荒pの当たり牌である五筒を重ね吉田pも13巡目に勝負に出る。
(23455566)白白發發發
しかしダマで張っていた板川pの7700(8000)に掴まる。
・南4局 親:前原p ドラ(8)
吉田pが前原pに一矢報いる満貫直撃で逆転2着浮上。板川pがAトップ
で優勝争いがほぼ2名に絞られる。
三四五五六七56(23488) 4ロン 前原p→吉田p 8000
11回戦 吉田p:▲5.0 板川p:36.6 前原p:▲12.5 荒p:▲19.1
■12回戦(吉田p×板川p×前原p×荒p)
まずはお互い牽制し合うかのように小場が続きあっという間に東ラス。
・東4局 親:前原p ドラ五
大きく動いたのは東4局、南家の吉田pの立直に前原p、満貫放銃。
五五六七八34789南南南 2ロン 前原p→吉田p 8000
・南1局 親:吉田p ドラ(8)
親を流された上、満貫放銃となってしまった前原pに黄色信号が灯ったが、
気合一閃の嵌五筒、2000・4000ツモで再び息を吹き返す。
三四五11(12346789) (5)ツモ
・南2局 親:荒p ドラ7
荒p聴牌、吉田pの立直を掻い潜り、板川pも追っかけ立直で参戦。
2000・3900ツモ和了り、必死に前原pに追いすがる。
二三六六六23477(789) 四ツモ
・南3局 親:板川p ドラ白
3位の望みがある荒pもまだ勝負を諦めてはいない。前原pの立直が
入るもドラ白暗刻で以下の聴牌。
五五七九(456)白白白 發(ポン)
この手も実らず逆に荒pは前原pに1300の放銃。しかし一番痛かった
のは最後の親番を蹴られた板川pであったであろう。
・南4局 親:前原p ドラ7
思わぬ接戦となった最終局、各自条件確認の時間を取る。この時点での
持ち点は、板川p(379)前原p(313)荒p(208)吉田p(300)
ここ最近の決勝最終局では既に勝敗が決している場合が多く、ただ逃げる
のを見守るだけであったが、勝負を決するべく前原pが攻めに行く。
四四五五六六3455678 5ロン 吉田p→前原p 11600
序盤に手が入り他家が手を作りに行く時間も与えず、そのままダマで構え
吉田pより11600を出和了りこれが決定打となる。
最後は字牌ブロック、完全オリで板川pも成す術なし。吉田pの一人聴牌
で流局となり前原雄大プロ十段戦、3連覇の偉業達成

12回戦 吉田p:▲12.6 板川p:10.9 前原p:19.9 荒p:▲18.2
<最終結果>
優勝:前原雄大プロ (+73.4)
2位:板川和俊プロ (+46.9)
3位:吉田幸雄プロ (▲33.2)
4位:荒 正義プロ (▲54.8)
5位:ダンプ大橋プロ(▲32.3)

前原雄大プロおめでとうございます

8回戦で大きなラスを取った時にはどうなるかと思いましたが、その後の
抜け番ですぐに気持ちを切り替える事が出来たのかもしれませんね。
板川pの最終二回戦の追い上げも素晴らしかったし、吉田pの10回戦の
ここ一番での集中力、荒pの巧みなゲーム運び、大橋pの大連荘もあり、
決勝メンバー全員がAリーガーという屈指の好カードで内容も最終回まで
もつれて見応えのある決勝戦だったと思います。
来年ストップ・ザ・前原に名乗りを挙げるのは誰なのか? 楽しみです。
選手の皆さん、観戦に参加された方、おつかれさまでした。
